ブレーカーが頻繁に落ちる、なぜか特定の家電の調子が悪い、あるいは、普段と変わらない生活なのに電気代が急に高くなった…。そんな電気にまつわる不可解な現象に、「もしかして、これって漏電?」と不安を感じていませんか。

漏電は、目に見えないところで静かに進行し、気づいたときには火災や感電といった取り返しのつかない事態を引き起こす可能性がある、非常に危険な電気トラブルです。

ご安心ください。この記事は、そんな漠然とした不安を解消するために、電気工事のプロが漏電の危険なサインから、ご自身でできる安全な確認方法、そして万が一の時の正しい対処法まで、分かりやすく解説します。この記事を最後までお読みいただければ、漏電の症状を正しく見極め、大切なご家族や財産を事故から守るための具体的な行動が明確になります。

放置は絶対NG!漏電が引き起こす2つの重大な危険

「漏電」と聞いても、詳しくは分からない方もいるかもしれません。しかし、漏電が起きているサインを軽く考えて放置するのは絶対に危険です。漏電には「感電」と「火災」、主に2つの大きなリスクがあります。

最悪の場合死に至る「感電」のリスク

漏電とは、電気が本来通るべき道から外れて漏れ出している状態です。この漏れ出た電気に人が触れてしまうと、人の体を電気が通り抜けてしまい、これが「感電」です。

人体に流れる電流の量によって、その影響は大きく異なります。

電流の強さ 人体への影響
1mA ピリッと感じる程度
5mA かなりの痛みを感じる
10mA 筋肉が収縮し、自分で電線から離れられなくなる
20mA 呼吸困難に陥り、非常に危険な状態
50mA以上 心臓が正常に動かなくなり(心室細動)、死に至る可能性が高い

家電の金属部分に触れたときに感じる「ピリピリ」とした小さな刺激も、感電のサインとなることがあります。このような警告を放っておくと、将来的に命に関わる重大な事故につながる恐れがあります。

すべてを失う「漏電火災」のリスク

漏電は、火災の非常に大きな原因の一つです。漏れ出た電気が、壁の中のホコリや建材などに流れ続けると、そこで熱が発生します。この熱が可燃物に引火することで「漏電火災」が起こります。

漏電火災の恐ろしい点は、コンセントの裏や壁の中など、人の目につかない場所で発生することが多いという点です。そのため発見が遅れがちで、気づいたときには大規模な火災に発展しているケースも少なくありません。実際に、住宅火災の原因の上位には常に電気関係のトラブルが入っており、漏電はその中でも主要な原因とされています。

もしかして漏電?今すぐ確認したい危険なサイン【症状別チェックリスト】

ご自宅で起きている不調が漏電によるものか判断するために、具体的な症状をチェックリスト形式でご紹介します。当てはまるものがないか、確認してみてください。

【家全体】の漏電症状:ブレーカー・電気代・異変

  • □ 分電盤にある「漏電ブレーカー」が頻繁に落ちる
  • □ 雨が降っている日や、湿気が多い日に限ってブレーカーが落ちる
  • □ 特別な理由がないのに、先月より電気代が急に高くなった
  • □ 家の中の金属部分(ドアノブ、水道管、手すりなど)に触れると、ピリピリとしびれる感じがする

【家電製品】の漏電症状:特定の機器の不調・発熱

  • □ 特定の家電製品(エアコン、洗濯機、電子レンジなど)を使うと、必ずブレーカーが落ちる
  • □ 家電製品の電源コードやコンセントプラグが、異常に熱くなっている
  • □ コンセント周りから、焦げ臭いにおいや「パチパチ」という音がする
  • □ 家電製品の金属部分に触れると、ピリピリする

【車・バイク】における漏電の症状:バッテリー上がり

  • □ 最近、車のバッテリーが頻繁に上がる
  • □ 長期間乗っていなかったわけでもないのに、エンジンがかからないことがある

あまり知られていませんが、車やバイクでも漏電は起こります。電装品の配線が劣化した場合や、後付けしたパーツの取り付けに不備があると、エンジン停止中でも微弱な電流(暗電流)が流れ続けるため、バッテリーが上がりやすくなります。

漏電箇所を特定!自分でできる安全な確認方法(分電盤の操作手順)

「いくつか当てはまる項目があった…」という場合、次に気になるのは「どこで漏電しているのか」ということでしょう。専門業者を呼ぶ前に、ご自身で安全に漏電箇所を絞り込む方法があります。それは、分電盤を操作することです。

【重要】この作業は、絶対に濡れた手で行わないでください。また、分電盤の内部には直接触れないように注意してください。

【図解】漏電ブレーカーを使った特定手順

  1. 全てのブレーカーを「切」にする
    まず、分電盤のカバーを開け、一番大きな「アンペアブレーカー」、真ん中にある「漏電ブレーカー」、そして各部屋につながる多数の「安全ブレーカー」のスイッチをすべて「切(下)」にします。
  2. 大きなブレーカー2つを「入」にする
    次に、「アンペアブレーカー」と「漏電ブレーカー」の2つだけを「入(上)」にします。この時点では、まだ各部屋に電気は流れません。
  3. 安全ブレーカーを1つずつ「入」にしていく
    ここからが重要な手順です。「安全ブレーカー」を、1つずつゆっくりと「入(上)」にしていきます。
  4. 原因箇所を特定する
    安全ブレーカーを1つずつ上げていく過程で、あるブレーカーを「入」にした瞬間に「漏電ブレーカー」が再び「切」に落ちた場合、その安全ブレーカーが担当している回路(部屋やコンセント)で漏電が発生しています。

漏電箇所が特定できたら、原因となった安全ブレーカーは「切」のままにしておき、他の安全ブレーカーだけを「入」にすれば、漏電していない場所の電気は安全に使うことができます。

【注意】これだけはNG!危険な自己判断と対処法

漏電箇所の特定はご自身でも可能ですが、その先の修理は絶対に自分で行わないでください。電気工事士の資格がない人が配線を触ることは、法律で禁止されているだけでなく、感電や火災を引き起こす極めて危険な行為です。

  • 原因がわからないまま、何度も漏電ブレーカーを上げ直す
  • 濡れた手でブレーカーやコンセントを触る
  • 自分でコンセントや配線を分解・修理しようとする

これらの行為は絶対に避け、必ず専門家に依頼してください。

漏電を確認したら?状況別の正しい対処法と連絡先

漏電している可能性が高いと分かったら、次は専門家に連絡して対処してもらう必要があります。ただし、連絡先はお住まいの状況によって異なります。

【持ち家】は専門業者へ、【賃貸】は管理会社へ

  • 持ち家(戸建て・分譲マンション)の場合
    ご自身で信頼できる電気工事業者を探し、調査と修理を依頼しましょう。電力会社は電柱からメーターまでを管理しているため、メーターより建物側のトラブルは電気工事業者が対応します。
  • 賃貸(アパート・マンション)の場合
    まず、大家さんや物件の管理会社に連絡してください。建物の設備に関する修理の責任は、基本的に所有者である大家さんにあります。勝手に業者を手配するのではなく、必ず指示を仰ぎましょう。

信頼できる業者選びの3つのポイントと費用相場【プロが解説】

いざ業者を探すとなると、どこに頼めば良いか迷うかもしれません。安心して任せられる業者を選ぶために、以下の3つのポイントを確認しましょう。

  1. 「電気工事士」の国家資格を持っているか
    これは大前提です。無資格での工事は違法であり、非常に危険です。会社のウェブサイトなどで、有資格者が施工することを明記しているか必ず確認しましょう。
  2. 料金体系が明確で、作業前に見積もりを提示してくれるか
    「調査費一式〇〇円」といった曖昧な説明ではなく、何にいくらかかるのかを丁寧に説明し、作業前に必ず見積もりを提示してくれる業者を選びましょう。後から高額な追加料金を請求されるトラブルを防げます。
  3. 迅速に対応してくれるか
    漏電は緊急対応が必要なトラブルです。深夜や休日でも対応してくれるなど、迅速に対応してくれる業者を選ぶと安心です。

漏電調査にかかる費用相場は、5,500円~11,000円程度が一般的です。ただし、これはあくまで調査のみの費用であり、修理が必要な場合は別途部品代や作業費がかかります。

なぜ漏電は起きる?知っておきたい原因と今後の予防策

トラブルが解決したら、今後は同じことが起きないように対策することも大切です。漏電の主な原因を知り、日頃から予防を心がけましょう。

5つの主な原因と今日からできる予防策

原因 対策
1. 電気配線や機器の経年劣化 定期的に専門家による点検を受けるのが理想です。築年数が古い家は特に注意が必要です。
2. 雨漏りや水濡れ 洗濯機や冷蔵庫、温水洗浄便座など、水回りの家電には必ずアース線を接続しましょう。アース線が接続されていれば、万が一漏電しても電気を地面に逃がせるため、感電を防ぐことができます。
3. 電源コードの損傷 コードを家具で踏みつけたり、ドアに挟んだり、無理に束ねたりしないようにしましょう。根元がぐらついているなど、損傷が見られる場合はすぐに使用を中止してください。
4. タコ足配線による過負荷 1つのコンセントから多くの電力を使いすぎると、コードが過熱して被覆が溶け、漏電の原因になります。消費電力の大きい家電は壁のコンセントから直接使いましょう。
5. ネズミなどの動物被害 屋根裏や壁の中で、ネズミが配線をかじって被覆を剥がしてしまうケースです。建物の隙間を塞ぐ、駆除業者に依頼するなどの対策が必要です。

まとめ:漏電のサインを見逃さず、プロに相談して安全を確保しよう

電気にまつわる些細な不調は、漏電という大きな危険が潜んでいるサインかもしれません。この記事でご紹介した症状を参考に、まずはご自宅の状況を確認してみてください。

  • 漏電の主な症状は、『ブレーカーが落ちる』『電気代の急増』『金属部分に触れたときのピリピリ感』など、さまざまです。
  • 漏電を放置すると、感電や火災といった命に関わる事故につながる危険があります。
  • 分電盤の操作で漏電箇所を調べることはできますが、修理は絶対に自分で行わず、必ず専門家に依頼してください。

漏電の調査や修理は、専門的な知識と技術が必要で、非常に危険な作業です。少しでも異常を感じた場合は、決して自己判断で対応しようとせず、信頼できる電気工事業者に相談することがご自身やご家族の安全を守る最も確実な方法です。

私たち「ピカくま」は、国家資格を持つ電気工事のプロフェッショナル集団です。漏電の調査から修理まで、24時間365日、迅速に対応します。調査・お見積もりは無料ですので、どうぞお気軽にご相談ください。

よくある質問

漏電は自然に直りますか?

漏電は、基本的に自然に直ることはありません。一時的に症状が治まったように見えても、配線の劣化や損傷がそのまま残っているため、非常に危険な状態が続いています。たとえば、雨がやんで乾燥したことで症状が一時的に出なくなる場合も、次に雨が降れば再発する可能性が高いため、必ず専門家による点検・修理を受けてください。

漏電調査にはどれくらいの時間がかかりますか?

漏電の原因や建物の構造によって異なりますが、一般的なご家庭の場合、調査から原因特定までにかかる時間は30分~1時間半程度が目安です。原因がすぐに特定できれば短時間で終わりますが、複雑なケースではそれ以上かかることもあります。

アパート全体で漏電しているようなのですが、どうすればいいですか?

まずは、ご自身の部屋の分電盤を確認し、漏電ブレーカーが落ちていないか確認してください。もし自分の部屋に問題がないのに、共用部(廊下、階段など)の電気が消えている、他の部屋でも同様のトラブルが起きているなどの場合は、建物全体の設備に問題がある可能性があります。速やかに大家さんや管理会社に連絡して状況を伝え、対応を依頼してください。