【プロが解説】漏電の主な原因は?放置は火災の危険も!自分でできる安全な調査方法から修理費用の相場まで

ブレーカーが頻繁に落ちたり、特定の家電を使うと電気が消えたりする現象に、「もしかして漏電かな?」と不安を感じていませんか。漏電はそのままにしておくと、感電や火災などの重大な事故につながる恐れがあり、決して軽く考えてはいけない電気トラブルです。しかし、「原因がどこにあるのか分からない」「誰に相談すればいいの?」「修理費用はいくらかかる?」といった疑問が次々に湧くのも当然です。
ご安心ください。この記事では、電気の専門家が、漏電の主な原因から安全にできる調査方法、信頼できる業者の選び方、さらに再発防止のための予防策まで、分かりやすくまとめています。最後までお読みいただくことで、漏電に対する漠然とした不安がなくなり、次にやるべきことが明確になります。
なぜ漏電する?家庭で起こりやすい9つの原因
漏電とは、電気が本来通るべき配線から外れて、外部へ流れ出してしまう現象のことです。その原因は一つだけでなく、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。ここでは特に家庭でよくみられる9つの原因をご紹介します。
原因1:家電製品や電気配線の経年劣化
長期間使っている家電や、築年数の古い家の電気配線は、年月とともに劣化していきます。電線を保護するゴムやビニールといった絶縁体が、熱や湿気によって硬くなったり、ひび割れたりすると、内部の導線がむき出しになりやすくなります。これが漏電の直接的な原因となる、もっとも一般的なケースです。
原因2:コードやプラグの破損・断線
家電のコードを家具の下に敷いていたり、ドアに挟んだり、無理に引っ張ったりしていませんか。このような物理的なダメージによって、コードの外側が破れたり、内部で断線することがあります。破れた場所から電気が漏れ出し、漏電になる危険性があります。
原因3:雨漏りや水濡れ(キッチン・洗面所・屋外)
水は電気を通しやすいので、雨漏りで壁の中の配線が濡れたり、キッチンや洗面所でコンセントや家電に水がかかったりすると、漏電が起きやすくなります。防水仕様でない屋外のコンセントや照明器具も、雨水の侵入によって漏電の原因となります。
原因4:タコ足配線による過負荷(オーバーカレント)
一つのコンセントで同時に多くの家電を使うと、コードが異常に熱くなることがあります。この熱でコードの外皮が溶け、中の導線がむき出しになったり接触したりして、ショートや漏電の危険が高まります。特に電子レンジやドライヤーのような消費電力の大きな家電を同じ電源タップで同時に使うのはとても危険です。
原因5:コンセントのホコリ(トラッキング現象)
冷蔵庫の裏などの普段掃除しない場所にあるコンセントやプラグの隙間にホコリが溜まっていませんか。そのホコリが湿気を含むと、電気を通す道ができ、火花が散って発火することがあります。これが「トラッキング現象」で、漏電火災の主な原因の一つです。
原因6:ネズミなど小動物によるケーブルの損傷
屋根裏や壁の中にネズミやイタチなどの小動物が入り込み、電気配線をかじってしまうことがあります。そのせいで配線の絶縁体が破れ、建物の金属部分などにふれて漏電が発生するケースもあります。こうした場合、原因の特定が難しいことがあります。
原因7:塩害や雷など自然環境の影響
海沿いの地域では潮風が屋外の電気設備に塩分を付着させ、金属部分を傷めて漏電が起きる「塩害」が起こることがあります。また、落雷でとても高い電圧(雷サージ)が流れると、家電や配線が壊れて漏電の原因になることがあります。
原因8:エアコン室外機や給湯器の故障
エアコンの室外機や電気給湯器などは、雨や風にさらされているため、内部の部品が壊れやすい傾向があります。特にモーターやコンプレッサーなどが故障すると漏電が起きることがあります。雨が降るとブレーカーが落ちるときは、これらが原因である場合も多いです。
原因9:不適切な電気工事によるトラブル
新築やリフォームの時の電気工事に不備があった場合も、漏電が生じる原因になることがあります。配線の接続が不完全だったり、絶縁処理が不十分だと、のちのち問題が起きてきます。必ず信頼できる業者に工事を頼むことが大切です。
もしかして漏電?すぐ確認したい危険なサインと初めての対応
漏電は見た目では分かりませんが、いくつかのサインがあります。これらの異常に早く気づき、正しい対応をすることで、事故を防ぐことができます。
こんな症状は要注意!漏電の5つのサイン
ご自宅で次のような症状がないか確認してみましょう。
サイン | 解説 |
---|---|
頻繁にブレーカーが落ちる | 特に漏電ブレーカーが作動する場合は、どこかで電気が漏れている可能性が極めて高いです。 |
電気代が急に高くなった | 家電の使用状況が変わらないのに電気代が異常に上がった場合、漏れた電気が無駄に消費されている可能性があります。2 |
金属部分に触れるとピリピリする | 洗濯機や冷蔵庫、水道の蛇口などに触れた際に静電気のような刺激を感じる場合、微弱な電流が漏れています。非常に危険なサインです。2 |
雨の日や湿度が高い日に停電する | 雨漏りや湿気が原因で、絶縁性能が低下して漏電している可能性があります。 |
家電から焦げ臭い匂いがする | 家電製品の内部でショートや過熱が起きており、漏電や火災につながる一歩手前の状態かもしれません。 |
漏電が疑わしいとき、まずやるべき安全確保の手順
これらのサインに気づいたときは、慌てずに安全を守ることが最優先です。感電するなどの被害を避けるため、次の点に注意しましょう。
- 濡れた手で分電盤や家電に絶対に触れない。
- 原因が特定できていない家電のコンセントを、無理に抜き差ししない。
- 焦げ臭い匂いや煙が出ている場合は、すぐに消防署(119番)に連絡する。
- 原因箇所を調べる際は、乾いたゴム手袋などを着用する(推奨)。
安全が確保できてから、次の対応に進みましょう。
【図解】自分で漏電箇所を特定する方法|漏電ブレーカーの安全な確認手順
専門業者を呼ぶ前に、ご自身で漏電している回路を特定できる場合があります。以下の手順に従って、安全に注意しながら分電盤を操作してください。
STEP1:全ての安全ブレーカー(分岐ブレーカー)をOFFにする
分電盤のカバーを開け、たくさんある小さなスイッチ(安全ブレーカー)をすべて「切(OFF)」にします。これで家の中のすべての回路が一度止まります。
STEP2:漏電ブレーカー(主幹ブレーカー)をONに戻す
次に、一番大きなスイッチ、または「テスト」ボタン付きの漏電ブレーカーを「入(ON)」にします。この時点でまた漏電ブレーカーが落ちる場合は、分電盤自体や家全体の配線が原因である可能性が高いので、すぐに専門業者に相談しましょう。
STEP3:安全ブレーカーを1つずつONにしていく
まず漏電ブレーカーが落ちずONのままなら、STEP1でOFFにした安全ブレーカーを一つずつ「入(ON)」にしていきます。どのブレーカーがどの部屋に対応しているかを確かめながら作業しましょう。もしあるブレーカーをONにした瞬間に漏電ブレーカーが落ちたら、その回路が漏電していると判断できます。
STEP4:原因回路に接続された家電を特定する
漏電した回路が分かったら、その回路につながる家電のプラグをすべてコンセントから抜きます(例:キッチンなら冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器など)。そのあと、もう一度STEP2と3を繰り返し、問題の安全ブレーカーをONにします。もし漏電ブレーカーが落ちなければ、原因は配線ではなく、さっき抜いた家電のうちのどれかである可能性が高いです。
漏電を放置する2大リスク|火災・感電事故につながる前に
「ブレーカーを上げ直せば大丈夫」と、漏電のサインを放置するのは絶対にやめましょう。そうすると命や財産を失う大きな危険が潜んでいます。
リスク1:漏電火災
漏電している場所では、常に熱が発生しています。壁の中や天井裏など目に見えないところで発生した熱が、近くのホコリや木材、断熱材などに燃え移り、火事になることがあります。特にコンセントに溜まったホコリが原因となるトラッキング現象は、漏電火災の代表的な例です。電気火災は気づきにくく、大きな火事になる恐れもあります。
リスク2:感電
漏電した電気機器の金属部分や濡れた場所に触れると、漏れた電気が人の体から地面に流れ、感電します。電流が強いと強い痛みだけでなく、筋肉が動かなくなったり、最悪の場合心臓が止まることもあります。たった10mA(ミリアンペア)程度の電流でも、身体が自分で離れられなくなってしまうほど危険です。
漏電の対処法|自分で直せる?プロに頼むべき理由と依頼のコツ
漏電の原因が分かっても、その後の対処を誤るのはとても危険です。ここでは正しい対処方法と専門家への依頼の仕方について説明します。
漏電修理は自分でできる?「電気工事士」資格が必要な理由
結論から言うと、漏電の修理は自分でしてはいけません。コンセント交換や配線修理などの作業は、国家資格である「電気工事士」を持つ人しか法律上できないと決まっています。資格がない人が修理すると、感電や火災の危険が非常に高いうえ、法律違反にもなります。必ず電気工事のプロに依頼してください。
【どこに頼む?】電力会社と電気工事店の違いと選び方のポイント
「漏電したけど、どこに電話すればいいの?」と迷ったときは、原因によって連絡先が変わります。
相談先 | 担当範囲 | こんな時に連絡 |
---|---|---|
電力会社 | 電柱から自宅の電気メーターまでの範囲 | 近所一帯が停電している、電線が切れているなど、家の外の設備に異常がある場合。 |
電気工事店 | 電気メーターから自宅内の全ての電気設備(分電盤、配線、コンセントなど) | ブレーカーが落ちる、コンセントが焦げているなど、家の中の設備に問題がある場合。 |
ほとんどの家庭内漏電は電気工事店の担当範囲です。信頼できる業者を選ぶには、「電気工事士の資格を持っているか」「見積金額が明確か」「アフターフォローがあるか」をチェックしましょう。
【費用相場】漏電調査・修理にかかる料金は?高額請求を避けるコツ
漏電修理にかかる費用は内容によって大きく変わります。おおまかな目安を知っておくと、不当に高い請求を避けられます。
作業内容 | 費用相場(目安) |
---|---|
漏電原因の調査 | 8,000円 ~ 15,000円 |
コンセント・スイッチの交換 | 5,000円 ~ 10,000円(1箇所あたり) |
ブレーカーの交換 | 15,000円 ~ 30,000円 |
配線の部分修理・引き直し | 20,000円 ~(長さや場所による) |
注意: ※上記はあくまで目安です。別途、出張費や夜間料金がかかることがあります。
高額請求を避けるために、必ず作業前に詳しい見積もりを出してもらい、納得したうえで契約しましょう。複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」もおすすめです。
今日からできる!漏電を防ぐ6つの予防策
漏電トラブルが解決したら、今度は再発防止に努めましょう。日頃の注意で漏電リスクは大きく減らせます。
1.家電のアース線は必ず接続(水回り家電は特に)
洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなどについている緑色の線(アース線)は、もし漏電したときに電気を安全に地面へ流すものです。必ずコンセントの対応穴につないでください。
2. タコ足配線はやめ、定格容量内で使う
電源タップには「合計1500Wまで」などと書いてあります。これ以上使わないように注意し、大きな電力を使う家電は壁のコンセントから直接電源を取るようにしましょう。
3. コンセント周りのホコリは定期的に掃除
年に1〜2回はコンセントからプラグを抜き、乾いた布でホコリを取り除きましょう。特に冷蔵庫やテレビの裏はホコリが溜まりやすいので注意しましょう。
4.濡れた手で電気製品を触らない
基本ですが、水気は大きな漏電原因です。キッチンや洗面所で家電を使うときは、必ず手の水分をしっかり拭いてから使いましょう。
5. コードを束ねたり、家具の下に敷かない
電源コードをきつく束ねると熱がこもって外皮が溶けることがあります。また、家具でコードを踏みつけたり、ドアに挟んだりしないように配線経路にも目を配ってください。
6. 月に1度は漏電ブレーカーのテストボタンを押す
分電盤の漏電ブレーカーにある赤色や黄色のテストボタンを押し、正しく作動するかを月に一度確認しましょう。ボタンを押してブレーカーが落ちれば正常な証拠です。
まとめ:漏電は早期発見と専門家への相談がカギ
「もしかして漏電かも?」という不安は、この記事で具体的な知識に変わり、次にやるべき行動が見えたはずです。
この記事の大事なポイントをまとめます。
- 漏電には「ブレーカーが落ちる」「家電がピリピリする」など、必ず何かしらサインがあります。
- 分電盤をうまく使えば、ご自分で原因の回路を特定できる場合もありますが、修理は必ずプロに頼んでください。
- アース線接続やコンセント清掃など、日々の予防策が火災や感電事故を防ぎます。
漏電は決して放置してはいけない危険なトラブルです。でも、正しい原因を突き止めて信頼できる専門家に頼めば、安全に解決できます。まずはご自宅の分電盤を確認し、冷静に行動しましょう。少しでも心配が残るときは、すぐにプロの電気工事店に相談するのが安心です。
よくある質問
賃貸マンションで漏電した場合、修理費用は誰が負担しますか?
原因によって異なります。
エアコンや給湯器など、元々部屋に設置されていた設備(備え付け設備)の経年劣化が原因であれば、大家さん(貸主)が負担するのが一般的です。
一方、入居者が持ち込んだ家電製品の故障や、不注意による水濡れなどが原因の場合は、入居者の負担となる可能性があります。
まずは管理会社や大家さんに連絡して状況を説明し、対応を相談してください。
うちには漏電ブレーカーがない古い家なのですが、どうすればいいですか?
漏電ブレーカーが設置されていない古い住宅は、漏電が発生しても電気が遮断されず、火災や感電のリスクが非常に高くなります。
安全のため、できるだけ早く電気工事店に相談し、漏電ブレーカー付きの新しい分電盤に交換することをおすすめします。
工事費用はかかりますが、家族の安全を守るための重要な投資とお考えください。
漏電すると、電気代は具体的にどれくらい上がりますか?
漏電による電気代の上昇額は、漏れている電流の量や時間によって大きく異なります。
ごくわずかな漏電が続いている場合、月に数百円から数千円程度の上昇で気づきにくいこともあります。
しかし、はっきりとした漏電が起きている場合は、普段の2倍以上の電気代になることも珍しくありません。
「今月だけ異常に高い」という場合は、漏電を疑う有力な手がかりになります。