地震などの災害が起きて電気が消え、ブレーカーが落ちて不安な思いをされていませんか?

早く電気を復旧させたいと焦るお気持ちはよく分かります。しかし、焦ってブレーカーのスイッチをオンにしないでください。

地震の後に電気が復旧したことが原因で火災が起きる通電火災(つうでんかさい)は、地震火災の主な原因の一つとされています。

この記事では、災害時に火事を防ぎ、ご家族の安全を守るための正しいブレーカーの復旧手順をステップバイステップで解説します。万が一、復旧しない場合の対処法や将来の不安をなくす感震ブレーカーについても説明します。

この記事を災害発生時に電気を安全に復旧させるための参考にしていただければ幸いです。

ブレーカーが落ちる原因と復旧しない時の安全な対処法をまとめた記事はこちらをご覧ください。

災害や地震時にブレーカーが落ちた時の正しい対応は?

災害や地震時にブレーカーが落ちた時の正しい対応は?

停電すると焦って分電盤(ブレーカーが集まる箱)に目が行きがちですが、その前に確認すべきことがあります。

感電や火災を防ぐため、以下の3点を必ずチェックしてください。

  • ガスの臭いはしないか?
  • 水漏れや浸水はないか?
  • 転倒した電化製品のプラグは抜いてあるか?

それぞれのポイントを詳しく解説します。

ガスの臭いはしないか?

まず、ご自宅や家の周囲でガスの臭いがしないかを確認してください。地震の揺れでガス管が損傷し、ガスが漏れている可能性があります。

もし少しでもガスの臭いがしたら、ブレーカーの操作は絶対に厳禁です。スイッチを入れた瞬間の小さな火花やスマートフォンの静電気ですら、ガスに引火して爆発する危険があります。

ガス臭い場合は、すぐに窓を開けて換気し、ご自身は屋外の安全な場所へ避難してください。

そして、契約しているガス会社に緊急連絡を入れましょう。ブレーカーを触るのは、ガス漏れの心配がなくなってからです。

水漏れや浸水はないか?

次に、室内で水漏れや浸水が起きていないかを確認します。地震で水道管や排水管が破損することがあります。

特に、以下の周りが水に濡れていないかをスマートフォンのライトなどでよく見てください。

  • 分電盤の周囲
  • 壁のコンセントの近く
  • 電化製品のまわり

濡れた状態で電気を復旧させると、ショートしてブレーカーが壊れたり、漏電して感電したりする原因になります。

もし水濡れを発見した場合は、ご自身で復旧作業を行うのは危険です。まずは安全な範囲で水を拭き取り、電気工事専門家による点検をご依頼ください。

転倒した電化製品のプラグは抜いてあるか?

最後に室内を見渡してください。地震の揺れで、電化製品が転倒・落下していませんか?

特に危険なのは、電気ストーブ、トースター、アイロンといった熱を出す機器です。これらが転倒し、カーテンや布団、雑誌など燃えやすいものに接触したまま電気が復旧すると、そこから火災が発生します。

また、家具の下敷きになった電源コードが内部で損傷している可能性もあります。安全が確認できるまでは、これらの電化製品の電源プラグをコンセントから抜いておくことを推奨します。

災害や地震時に落ちたブレーカーの種類を見分ける方法は?

災害や地震時に落ちたブレーカーの種類を見分ける方法は?

安全確認が終わったら、分電盤を見に行きましょう。

ブレーカーにはいくつか種類があり、どれが落ちたかで原因や対処法が異なります。まずはご自宅の状況を把握することが大切です。

漏電ブレーカーが落ちている場合

分電盤の中で、一番大きなスイッチが落ちていませんか?それは漏電ブレーカー(漏電遮断器)です。

これは家全体を守るメインのスイッチです。これが落ちたということは、家の中のどこかで漏電している可能性を示しています。

漏電は火災や感電に直結する危険なサインの一つです。

または、もしご自宅に感震ブレーカー(揺れを感知する装置)が設置されている場合、地震を感知して、意図的にこの漏電ブレーカーを落とした可能性もあります。

いずれにせよ、この後の安全な復旧手順が重要になります。

安全ブレーカーだけが落ちている場合

メインのブレーカーは落ちておらず、横に並んだ小さいスイッチのどれか一つ、または複数が落ちている場合もあります。これは安全ブレーカー(分岐ブレーカー)です。

これは、リビング、台所、エアコンなど、各部屋や特定のコンセントにつながる個別のスイッチです。これだけが落ちている場合、その先の回路や、つながっている電化製品が地震の揺れでショートしたと考えられます。

例えば、落下した照明器具や家具の下敷きになった電源コードが原因かもしれません。この場合、原因となっている家電のプラグを抜くなどすれば、比較的簡単に復旧できる可能性があります。

アンペアブレーカーが落ちている場合

電力会社との契約容量(「40A」などと書かれています)を決めるアンペアブレーカーが落ちている場合です。これは主に電気の使いすぎで落ちるものです。

地震そのものが原因でこれが落ちるケースは稀です。しかし、停電から復旧した際に冷蔵庫やエアコン、テレビなどの家電が一斉に動き出し、契約容量を超えてしまった可能性が考えられます。

災害や地震時に火事を防ぐための安全なブレーカー復旧手順は?

災害や地震時に火事を防ぐための安全なブレーカー復旧手順は?

地震後の火災(通電火災)を防ぐための安全な復旧手順をステップバイステップで解説します。

なお、この作業は、できれば日中の明るい時間帯にご家族など二人以上で行うと、異常(煙や火花)の確認がしやすくなり安全です。

すべての安全ブレーカーを切にする

まず、分電盤にある小さいスイッチ(安全ブレーカー/分岐ブレーカー)をすべて切(OFF)にしてください。レバーをカチッと下に降ろします。

この作業の目的は、家の中の回路をすべて切り離し、もし漏電やショートしている箇所があっても電気が流れないようにするためです。

これをやらずにメインのスイッチだけを上げると、異常のある回路に一気に電気が流れ、火花が出たり火災になったりする原因になるため危険です。

漏電ブレーカーを入にする

全ての安全ブレーカーを切にしたら、次に漏電ブレーカーを入(ON)にします。レバーを上に上げてください。

ご自宅に後付けの感震ブレーカーがある場合、揺れを感知して作動したおもりやレバーをリセットする操作が必要な場合があります。機器の表示を確認してください。

この時点で、もし漏電ブレーカーがすぐにまた切に落ちてしまう場合は、家の大元の配線や分電盤自体が深刻なダメージを受けている可能性があります。これは危険なサインですので、即座に作業を中止し、電力会社または電気工事会社に連絡してください。

安全ブレーカーを1つずつ入にして確認する

漏電ブレーカーが無事に入の状態を保てたら、安全ブレーカーを、1つずつ、ゆっくりと入(ON)にしていきます。

1つ入にするたびに、数秒待ち、異常がないかを確認します。これは、家の中のどの回路が安全で、どの回路が危険(漏電・ショート)なのかを特定するための作業です。

もし分電盤に台所、寝室などの表示があれば、どの部屋の電気が復旧したかを確認しながら行うと、より確実です。

もし入にした瞬間にメインが落ちたら?

ある安全ブレーカーを入にした瞬間に、メインの漏電ブレーカーが再び落ちたとします。

これは、今オンにした回路またはその回路につながっている電化製品が、漏電かショートをしているサインです。

その場合は、以下の対応を取ってください。

  1. 原因となった安全ブレーカーを、再び切に戻す
  2. メインの漏電ブレーカーを、もう一度入にする
  3. 原因となった安全ブレーカーは切のままにしておく
  4. まだ試していない残りの安全ブレーカーを1つずつ入にしていく

こうすることで、異常のある回路だけを切り離し、他の安全な部屋の電気は復旧させることができます。

原因となった回路(切のままにした回路)は絶対に自分で修理しようとせず、専門家による点検・修理をご依頼ください。

災害や地震時に火災を防ぐために復旧の手順を守ることが重要なのはなぜ?

災害や地震時に火災を防ぐために復旧の手順を守ることが重要なのはなぜ?

面倒な手順にはあなたとご家族の命と財産を守るための重大な理由があります。それが通電火災です。

実は、大地震の後に発生する火災の半数以上は、電気が原因(通電火災)であると言われています。地震の揺れそのものではなく、停電が復旧した後に火事が起こるのです。

通電火災とは?

通電火災は、主に以下のようなケースで発生します。

  • 地震で倒れた本棚やタンスの下敷きになり、電源コードが内部で損傷する → 停電が復旧した際、その損傷箇所がショートし、ホコリなどに着火する
  • 電気ストーブや熱帯魚のヒーターなどが転倒 → カーテンやじゅうたん、雑誌など燃えやすいものに接触したまま停電 → 住人が避難して不在の間に電気が復旧し、ストーブが再通電して着火する
  • 地震で破損した配線やコンセントが水漏れで濡れる → 電気が復旧した際にショートし、火花が出て発火する

これらはすべて、電気が復旧した時に電気が流れるべきでない場所に電気が流れることで発生します。

安全な復旧手順は通電火災を防ぐために重要

安全ブレーカーを1つずつ入れるという手順は、まさにこの通電火災を防ぐための安全確認作業なのです。

もし損傷した回路(例えば、家具の下敷きになったコードの回路)があっても、その回路のブレーカーを入れた瞬間に、メインの漏電ブレーカーが異常(漏電)ありと検知し、電気を即座に遮断してくれます。これにより、損傷箇所が発熱して火災に至る前に、危険を検知することが可能になります。

「全てOFFにする→メインをONにする→分岐1つずつONにする」という作業は、修理や点検の後に必ず行う安全確認の基本動作でもあります。

地震などの災害でブレーカーが落ちて専門家を呼ぶべき状況は?

地震などの災害でブレーカーが落ちて専門家を呼ぶべき状況は?

安全な手順を試しても電気が復旧しない場合や、異常が見つかった場合は、決して無理をしないでください。ご自身で解決しようとすると、感電や火災のリスクを高めるだけです。

以下のケースに当てはまったら、すぐに電気工事のプロにご連絡ください。

  • 漏電ブレーカーが何度やっても入らない
  • 特定の安全ブレーカーを入れると必ず落ちる
  • ブレーカー周辺が焦げ臭い・変色している・熱を持っている

それぞれの状況を詳しく解説します。

漏電ブレーカーが何度やっても入らない

全ての安全ブレーカーを切にしているにも関わらず、メインの漏電ブレーカーが入らない(またはレバーを上げてもすぐに落ちてしまう)場合です。

これは、分電盤自体や、そこから各部屋へつながる大元の配線が深刻な損傷(漏電)を受けている可能性が高い状態です。これは一般家庭の方では絶対に修理不可能な領域であり、すぐに専門家による点検が必要です。

特定の安全ブレーカーを入れると必ず落ちる

リビングや台所など特定の安全ブレーカーを入にすると、必ずメインの漏電ブレーカーが落ちる場合です。

その回路の配線(壁の中など)が損傷しているか、その回路のコンセントに接続された電化製品が故障している可能性が高いです。

まずは、その回路につながるコンセントに刺さっている電化製品のプラグを、すべて抜いてみてください。

その上で再度試してもブレーカーが落ちる場合は、壁の中の配線自体が原因である可能性が濃厚です。修理には電気工事士の資格が必要ですので、電気工事のプロにご相談ください。

ブレーカー周辺が焦げ臭い・変色している・熱を持っている

復旧作業中、または無事に復旧した後でも、分電盤の周辺から焦げ臭い匂いがしたり、ブレーカー本体や配線の一部が茶色く変色していたり、触れないほど熱を持っていたりする場合です。

これらは、ブレーカーの内部や配線の接続部分でショートや接触不良が起きており、火災寸前の危険な兆候です。

この場合は、安全のため、すぐにメインの漏電ブレーカーを切にして電気を止めてください。そして、絶対に触らず、直ちに消防(火災の恐れがある場合)と、電気工事会社にご連絡ください。

地震に備えて通電火災を防ぐ感震ブレーカーとは?

地震に備えて通電火災を防ぐ感震ブレーカーとは?

「大きな地震が来たらどうしよう」「自分が留守の時に地震が来て、通電火災が起きたら」このような不安をお持ちの方もおられるでしょう。

通電火災から確実に家族を守るために推奨する対策が感震ブレーカーです。仕組みや設置方法を詳しく解説します。

揺れを感知して自動で電気をOFF!通電火災を防ぐ仕組み

感震ブレーカーとは、その名の通り地震の揺れを感知するブレーカーです。

設定された震度(多くの場合は震度5強相当)以上の揺れを感知すると、自動的にメインブレーカーを切にし、家中の電気を遮断してくれます。

これにより、住人が避難して不在の時や、夜間で就寝中などご自身でブレーカーを切りに行けない状況でも電気が自動で止まります。つまり、電化製品の転倒や配線の損傷による通電火災のリスクを防ぐことができるのです。

消防庁や多くの自治体も、地震火災対策として設置を推奨している信頼性の高い防災設備です。

感震ブレーカーの種類と設置費用の目安

感震ブレーカーには、いくつか種類があります。ご自宅の状況に合わせて選ぶことが可能です。

タイプ 概要 最適な導入シーン 費用目安
分電盤内蔵タイプ 分電盤そのものに感震機能が内蔵されているタイプ 新築、リフォーム、分電盤交換時 約5万円~8万円程度
後付けタイプ メインブレーカーに感震センサーユニットを外付けするタイプ 比較的安価に導入したい場合 約2万円~
簡易タイプ(コンセント型など) 特定のコンセントに差し込み、揺れを感知するとそのコンセントの電気だけを止めるタイプ 工事不要で導入したい場合

これらのうち分電盤に設置するタイプは、安全のため電気工事士の資格を持つ専門家による工事が必須です。

まずは専門家による電気の点検から

「うちにも設置できるか知りたい」「費用を正確に知りたい」そうお考えの方は、ぜひ一度電気の点検サービスをご利用ください。

電気のプロがご自宅に伺い、分電盤や配線の状態をチェックし、今回の地震による隠れたダメージがないかを確認します。その際に、お客様のご家庭に最適な感震ブレーカーのご提案や正確なお見積もりをお出しすることも可能です。

まずはご自宅の電気設備を健康診断するつもりで、お気軽にご相談ください。

まとめ

地震でブレーカーが落ちた時の安全な対処法について解説しました。

最も重要なポイントは以下の3点です。

  • 焦ってブレーカーを戻さない
  • 安全な手順で復旧する
  • 異常があれば即専門家に連絡する

地震後の通電火災は、正しい知識と手順で防ぐことができます。そして、将来の大きな安心のために、感震ブレーカーの設置は有効な対策です。

災害や地震時に、ご家庭の電気の安全について見直すきっかけとしていただければ幸いです。電気のことでご不安な点があれば、いつでも私たち電気工事のプロにご相談ください。

よくある質問

災害や地震時に近所も停電しているようです。この場合はどうすればいいですか?

ご近所一帯が停電している場合は、お住まいの地域を管轄する電力会社の送電網にトラブルが発生している地域停電の可能性が高いです。まずは電力会社の公式ウェブサイトやSNSで停電情報を確認してください。

この場合、ご自宅のブレーカー操作で電気は復旧しません。ただし、電気が復旧した際の通電火災を防ぐため、ご自宅のメインの漏電ブレーカーは切にしておき、家電のプラグも抜いておくことを推奨します。

地震でブレーカーが落ちた時、ブレーカーを触る前にまず確認すべき3つの安全チェック項目は何ですか?

感電や火災を防ぐため、ブレーカー(分電盤)を操作する前にご自宅の安全を確認することが最優先です。特に以下の3点に注意してチェックしてください。

  • ガスの臭いはしないか?
  • 水漏れや浸水はないか?
  • 転倒した電化製品のプラグは抜いてあるか?

もしガスの臭いがすれば引火・爆発の危険があり、水濡れがあれば漏電や感電の危険があります。また、転倒した電化製品(特にストーブなど)が燃えやすいものに触れていると、電気が復旧した際に火災の原因となります。

これらの異常を発見した場合は、ブレーカーの操作は絶対にせず、まずはガス会社や電気工事の専門家へ連絡してください。

なぜ地震の直後に焦ってブレーカーをオンにすると危険なのですか?

地震の揺れによって、目に見えない壁の中の配線が傷ついたり、電化製品が転倒したりしている可能性があるためです。

その状態で電気が復旧すると通電火災を引き起こす恐れがあります。通電火災とは、停電が復旧し、再び電気が流れた際に出火する火災のことで、地震火災の主な原因の一つとされています。

  • 傷ついた配線がショートして発火する
  • 転倒したストーブなどが、燃えやすいものに触れたまま再通電し出火する
  • 破損したコンセントが水に濡れてショートし、火花が出る

このように、電気が復旧したタイミングで火災が発生するため、ご自身やご家族が避難して不在の間に発生するケースも多く危険です。

火災を防ぐための安全なブレーカー復旧手順は?

通電火災を防ぐには家の中の回路に異常がないかを一つずつ確認しながら、安全な手順で電気を復旧させることが重要です。必ず以下のステップで作業を行ってください。

  1. すべての安全ブレーカーを切(OFF)にする
  2. 漏電ブレーカーを入(ON)にする
  3. 安全ブレーカーを1つずつ、ゆっくりと入(ON)にしていく

この手順により特定の回路の配線や家電に異常があっても、そのブレーカーを入れた瞬間に漏電ブレーカーが危険を察知して再び落ちるため、火災を未然に防ぐことができます。

異常が見つかった回路は切のままにし、安全が確認できた部屋の電気だけを復旧させ、異常箇所は専門家による点検を依頼してください。