家の電気が突然消えて、分電盤を見に行ってもブレーカーが上がらない!このような状況では、焦りと不安でいっぱいでしょう。

「どうすれば電気が復旧するの?」「ブレーカーを触って、感電したり火事になったりしない?」といった疑問がでてくることでしょう。

この記事では、まずブレーカーを絶対に触ってはいけない危険なサインを解説します。その上で、ご自身で安全に確認できる対処法、漏電の特定手順、そして専門家を呼ぶべき判断基準や費用の相場まで、分かりやすく解説します。

まずは落ち着いて、この記事の手順通りに確認していきましょう。

ブレーカーが上がらない原因は?

ブレーカーが上がらない原因は?

ブレーカーや周囲に危険なサインがなかった場合、次のステップに進みましょう。まずは、ご自宅の分電盤のフタを開けて、どのブレーカーが落ちているのかを診断します。

分電盤には、大きく分けて3種類のブレーカーがあり、それぞれ役割と原因が違います。それぞれの役割と原因を詳しく解説します。

3種類のブレーカーの役割と原因

ブレーカーは以下の3種類があります。

  • アンペアブレーカー
  • 安全ブレーカー
  • 漏電ブレーカー

それぞれのブレーカーの役割とブレーカーが上がらない原因を表にまとめました。

種類 見分け方 落ちる主な原因 復旧のヒント
アンペアブレーカー 左側にある一番大きなスイッチ
40Aなど契約アンペア数が記載されている
家全体での電気の使いすぎ 使用中の家電(ドライヤー、レンジ等)を減らしてから上げる
安全ブレーカー キッチン、居室など小さなスイッチが複数並んでいる 特定の部屋での電気の使いすぎ、または家電のショート その部屋で使っている家電のプラグを抜いてから上げる
漏電ブレーカー 中央付近にある
漏電遮断器、テストボタンがある
家のどこかで漏電が発生している 安全確認の手順が必要
火災・感電の危険あり

アンペアブレーカーは家全体の電気の使いすぎ

分電盤の左側にある、一番大きなスイッチです。これは、電力会社と契約しているご家庭全体で一度に使える電気の量(30A、40A)を管理しています。

これが落ちた場合、原因は家全体での電気の同時使用です。

例えば、エアコン、電子レンジ、ドライヤー、電気ケトルなど消費電力の大きい家電を同時に使って、契約容量(アンペア数)をオーバーしてしまったということです。

これは故障ではなく、使いすぎていますよというサインの正常な動作です。

安全ブレーカーは特定の部屋・家電の使いすぎやショート

分電盤の中に、小さなスイッチがいくつか並んでいる部分です。キッチン、エアコン、居室など、各部屋やコンセントの回路を個別に守っています。

これが落ちた場合、一部屋だけ電気がつかない状態になります。

原因は主に以下の2つです。

  • その回路での電気の使いすぎ
  • 繋いでいる特定の家電が故障・ショートしている

漏電ブレーカーはどこかで漏電が発生

漏電遮断器やテストボタンと書かれていることが多い、中央付近にあるスイッチです。これが、ご家族の命を守るための重要な安全装置です。

これが落ちた場合、家のどこかで漏電(電気が本来の道から外に漏れている状態)が発生していることを意味します。

ブレーカーが上がらない原因として深刻なのがこの漏電であり、放置すると火災や感電事故を引き起こす可能性があります。

漏電ブレーカーは、その危険を察知して電気を強制的に遮断してくれたのです。

ブレーカーが上がらない時に触ってはいけない危険なサインは?

ブレーカーが上がらない時に触ってはいけない危険なサインは?

ブレーカーのレバーを上げようと手を伸ばすその前に、まず立ち止まってください。ブレーカーが上がらないという状態以外にも、電気の異常を示す危険な症状はいくつか存在します。

これからお伝えするサインが一つでもある場合、復旧作業を試みてはいけません。これらは、電気火災や感電事故に直結する深刻なトラブルの兆候です。

分電盤周辺が焦げ臭い・変色や焦げ跡がある

もし、分電盤の周辺で焦げ臭い匂いがしたら、それは危険な症状です。

プラスチックが焦げるような匂いや、ブレーカー本体・周辺の壁紙が茶色く変色したり焦げたりしている場合、内部の配線やブレーカーが異常に過熱し、すでにショートや発火が始まっている可能性があります。

これは電気火災の一歩手前です。この状態でブレーカーを無理に上げようとする行為は危険です。絶対にブレーカーには触れず、すぐに電気工事の専門家(賃貸の場合は管理会社)に連絡してください。

ブレーカー本体が異常に熱い・ジーという異音がする

ブレーカー本体にそっと触れようとした時、明らかに熱いと感じる場合も異常事態です。ブレーカーは通常、人肌以上に熱くはなりません。

また、ジー、ブーンといった異音が聞こえる場合は以下のサインです。

  • 内部の部品が緩んでいる
  • 接触不良を起こしている
  • 過負荷が続いる

これらも放置すれば発熱し、発火の原因となります。

熱い、音がするといった症状を感じたら、操作を一旦中止し、専門家による点検を検討してください。

水濡れ・ひどい結露の形跡がある

電気と水は最悪の組み合わせです。分電盤の周辺が濡れていたり、ひどい結露を起こしていたりしませんか?

近くでの水漏れや雨漏り、結露によって、ブレーカー内部が濡れると漏電が発生します。

言うまでもなく、濡れた手で触るのは非常に危険です。感電のリスクが高くなります。

ご自身で拭き取ろうとせず、まずは水漏れの原因に対処し、電気系統は必ず専門家の点検を受けてください。

ブレーカーが上がらない時の正しい対処法は?

ブレーカーが上がらない時の正しい対処法は?

さて、3種類のブレーカーのうち、どれが落ちているか特定できましたか?

ここからは、種類別に安全な対処法を解説します。

アンペアブレーカーが上がらない場合の対処法

家全体が停電した場合、ご自身で安全に復旧できる可能性が高いです。

以下の手順で復旧作業をしてください。

  1. 使用中の家電製品、特に消費電力の大きいものの電源を切り、コンセントからプラグを抜く
  2. 分電盤に戻り、落ちているアンペアブレーカーのレバーをオンに戻す
  3. 電気が復旧したら、先ほどプラグを抜いた家電を、一度にではなく時間差で使い始め

もし、使用する家電を減らしてもブレーカーが上がらない、または上げてもすぐに落ちてしまう場合は、契約アンペア数がご家庭の生活スタイルに合っていないか、漏電やブレーカーの故障が隠れている可能性も考えられます。

安全ブレーカーが上がらない場合の対処法

一部屋だけ電気がつかない場合は、以下の手順を試してください。

  1. 停電している部屋に行き、その部屋で使っている家電製品のプラグをすべてコンセントから抜く
  2. 分電盤に戻り、落ちている安全ブレーカーをオンに戻す
  3. 電気が復旧したら、先ほどプラグを抜いた家電を一つずつコンセントに差し込んでいく

特定の家電を差し込んだ瞬間に再び安全ブレーカーが落ちたら、その家電が故障(ショート)している可能性が高いです。その家電の使用を中止し、修理や買い替えを検討してください。

ブレーカーが落ちていないのに電気がつかない場合

一部屋だけ電気がつかないのに、安全ブレーカーを見てもどれも落ちていないというケースもあります。

その場合はブレーカー以外の以下の原因が考えられます。

  • 電球(LED)が切れている
  • 照明器具そのものが故障している
  • 壁のスイッチやコンセントの内部が故障している

この場合は、電気工事のプロにご相談ください。

漏電ブレーカーが上がらない場合の漏電箇所の特定方法

漏電ブレーカーが落ちていた場合、慎重な対処が必要です。

ブレーカーが上がらない漏電は危険です。火災や感電を防ぐために、漏電している回路を特定する安全確認作業を行いましょう。

以下の手順で慎重に操作してください。

  1. すべての安全ブレーカーをオフにする
  2. 漏電ブレーカーをオンにする
    ※この時点で漏電ブレーカーが上がらない、または上がってもすぐに落ちる場合は、分電盤自体や、壁の中の太い配線(幹線)が漏電している深刻な状態です。すぐに操作を中止し、専門家に連絡してください。
  3. 漏電ブレーカーがオンのままになったら、安全ブレーカーを端から一つずつ、ゆっくりとオンにしていく
  4. 順番に上げていき、ある安全ブレーカーを上げた瞬間に漏電ブレーカーが再び落ちたら、その回路が漏電している原因
  5. 漏電原因と特定された安全ブレーカーは、オフのままにしておく
  6. 他の問題がない安全ブレーカーをすべてオンに戻し、最後に漏電ブレーカーをオンにする

これで、漏電している回路以外は、電気が復旧するはずです。

漏電箇所が判明した回路は、電気工事会社による点検・修理が完了するまで、火災や感電の危険があるため、絶対に使用を控えてください。

対処法を試してもブレーカーが上がらない場合どんな原因がある?

対処法を試してもブレーカーが上がらない場合どんな原因がある?

「手順通りにやったのに、どのブレーカーも上がらない」「復旧したけど、またすぐに落ちてしまう」

このような状況なら、それは電気の使いすぎではなく、より深刻な故障が原因かもしれません。それぞれの原因を詳しく解説します。

ブレーカー自体の故障・寿命

あまり知られていませんが、毎日電気を安全に使うためのブレーカーや分電盤にも寿命があります。

メーカーが推奨する交換時期は、設置から約13年です。法定耐用年数も15年と定められています。

もし、お住まいが築10年以上経過している場合、ブレーカー内部の部品が劣化している可能性があります。

劣化すると、以下のような誤作動を起こしやすくなります。

  • 電気を使いすぎていないのに頻繁にブレーカーが落ちる
  • 漏電してもブレーカーが作動しない

電気の使いすぎでもないのに頻繁に落ちる、何度上げてもすぐ落ちるといった場合は、ブレーカーの寿命による故障を疑うべきサインです。この場合、専門家による修理交換が必要になります。

家電製品や配線・コンセントの深刻な故障

漏電特定手順で原因と特定された家電が、内部で完全にショートしたり、漏電したりしているケースです。

あるいは、目に見えない壁の中の電気配線や、壁のコンセント自体が、長年の使用で劣化・断線していることもあります。特に古い家や、水回りのコンセントは注意が必要です。

これらの修理・交換は、国家資格を持つ電気工事士でなければ行えません。

お住まいの地域一帯の停電

最後に、そもそもご自宅だけの問題ではない可能性です。台風や落雷、近所の事故などで、お住まいの地域一帯が停電しているケースです。

窓から外を見て、近所の家の明かりがどうなっているか確認してください。また、スマートフォンで、ご契約の電力会社の公式WebサイトやSNSを確認してください。

もし地域全体が停電している場合、ご自宅のブレーカーを操作しても電気は復旧しません。電力会社の復旧作業を待ちましょう。

ブレーカーの修理・交換はどこに頼むべき?費用相場と業者の選び方は?

ブレーカーの修理・交換はどこに頼むべき?費用相場と業者の選び方は?

ブレーカーの修理・交換を誰に頼めばいいのか、費用はいくらかかるのかと疑問に思うことでしょう。

ブレーカーの修理交換には専門知識が必要です。高額請求などへの不安を解消するために、信頼できる業者に依頼することが大切です。

賃貸(アパート・マンション)の場合は管理会社へ

もし、お住まいが賃貸物件(アパート・マンション)の場合、慌てて電気工事店に電話する前に、まずやるべきことがあります。

それは、管理人、管理会社、または大家さんに連絡することです。

ブレーカー(分電盤)の修理費用は、建物の設備であるため、通常は大家さん(オーナー)が負担します。また、トラブルの原因が、お住まいの部屋だけでなく建物全体の電気設備にある可能性も考えられます。

そのため、無断で業者を手配して修理・交換を行うと、事前に連絡がなかったとしてトラブルになったり、退去時に費用を請求されたりするリスクがあります。

必ず、契約書に記載されている緊急連絡先や管理会社に、まず第一報を入れてください。

持ち家の場合は電気工事店へ

持ち家の場合は、信頼できる電気工事店に依頼しましょう。

ブレーカーの交換や、コンセント・配線の修理は、電気工事士という国家資格が必要な専門作業です。

交換ぐらい自分でできると安易にDIYを行うことは非常に危険です。感電や施工不良による火災といった、取り返しのつかない事故に繋がる可能性が高いです。そのため、無資格者の作業は法律で固く禁止されています。

ブレーカー修理・交換の料金相場は?

ブレーカー修理・交換の料金相場がどれくらいなのかと不安になるかもしれません。

以下に、一般的な作業内容ごとの料金相場をまとめました。

作業内容 費用相場 作業時間の目安
漏電箇所の調査 7,000円〜30,000円 30分〜2時間
安全ブレーカー交換(1箇所) 8,000円〜15,000円 30分〜1時間
漏電ブレーカー交換 20,000円〜35,000円 1時間程度
分電盤全体の交換 50,000円〜100,000円 2時間〜4時間

上記はあくまで目安です。多くの業者では、これに出張費や、夜間・休日の場合は割増料金が加わることがあります。

ブレーカーが上がらない場合の修理・交換の目安と流れについてはこちらをご覧ください。

信頼できる電気工事業者の見分け方

どこに頼んでも同じではありません。残念ながら、法外な料金を請求する業者も存在します。誠実な業者を見分けるポイントは見積書です。以下の点に特に注意しましょう。

確認事項 内容
見積書の内訳が明確か? 「工事一式〇〇円」といった大雑把な見積もりではなく、部品代(ブレーカー本体価格)、作業費、出張費など何にいくらかかるのかを具体的に記載しているか
説明が丁寧で分かりやすいか? 見積書や作業内容について質問した際に、専門用語ばかりでごまかさず、納得できるように丁寧に説明してくれる業者
資格や実績が明示されているか? 電気工事士の資格を持ったスタッフが作業することが大前提
Webサイトなどで、資格や地域での施工実績が確認できると安心

ブレーカーの不調や10年以上経過した分電盤の点検など、電気に関するお困りごとは、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

ブレーカーが上がらなくなった時は、まず安全を最優先してください。焦げ臭い、熱い、水濡れといった危険な症状がないかを確認し、異常があれば絶対に触らず専門家へ連絡してください。

安全が確認できたら、落ちたブレーカーの種類とその原因を診断することが重要です。特に漏電が疑われる場合は、感電・火災を防ぐため、必ず記事で解説した漏電特定手順を慎重に行ってください。

突然の停電は誰でもパニックになりますが、正しい知識があれば、安全に対処できます。この記事が、あなたの不安を解消し、安全な日常を取り戻すためのお役に立てれば幸いです。

よくある質問

ブレーカーが上がらない場合、どうすればいいですか?

まずは、危険な症状がないかを確認し、アンペアブレーカーが落ちた等の安全なケースであれば、復旧作業を試みてください。

それでも復旧しない場合、賃貸であれば管理会社の連絡先を確認してください。持ち家の場合は、多くの電気工事店に相談しましょう。

ブレーカーが上がらない時、感電や火災を防ぐため対処の前にまず確認すべき危険なサインとは何ですか?

ブレーカーを操作する前に、ご自身の安全が最優先です。以下のサインがないか確認してください。

  • 分電盤周辺が焦げ臭い、変色・焦げ跡がある
  • ブレーカー本体が異常に熱い、または「ジー」という異音がする
  • 分電盤やその周辺に水濡れやひどい結露がある

上記のサインが一つでもある場合は、感電や火災の危険が高いため、絶対にブレーカーに触らず、すぐに専門家に連絡してください。

ブレーカーそれぞれが落ちる主な原因の違いは何ですか?

分電盤にある3種類のブレーカーは、それぞれ守る範囲と落ちる原因が異なります。

  • アンペアブレーカーは家全体の電気の使いすぎ
  • 安全ブレーカーは特定の部屋での電気の使いすぎ、または家電のショート
  • 漏電ブレーカーは家のどこかで漏電が発生している

このように、落ちたブレーカーの種類によって、電気の使いすぎなのか、家電の故障なのか、あるいは危険な漏電なのかを判断する材料になります。